策謀の結末/THE CONSPIRATORS
米1978/5/13 日1979/1/3

監督 レオ・ペン
脚本ハワード・バーク
ゲストスター クライブ・レビル
声:小池版/納谷悟朗
  石田版/家弓家正
犯人の職業詩人・作家・IRA活動家
被害者武器の闇商人/"ポーリー"
殺害方法射殺


Introductionby T.O.

ビンセント・ポーリー(アルバート・ポールセン)という男が射殺された。
彼が所持していた著者サイン入りの本を頼りに詩人ジョー・デブリン(クライブ・レビル)の 邸を尋ねるコロンボ。
アイルランド出身のデブリンは大財閥オコンネル工業と共に“北アイルランド援護協会”の理事を務める。
同協会の活動目的はアイルランド紛争犠牲者救援の為の募金。だがその金で平和は訪れない。なぜか?
その金は武器の購入に充てられていたのである。デブリンはM-11型自動小銃を500挺、 仲介人のポーリーから買い付ける契約を交わしていた。
しかしその過程で彼がピンはねをしている事に感付いたデブリンは裏切り者として処刑したのだ。
殺害現場で犯行時の再現とアイリッシュ・ウィスキーのボトルについて考察するコロンボ警部。 コロンボは捜査の網を着実に絞る。
その網を掻い潜り、船でベルファストに自動小銃の密輸出を画策するデブリン。
アイリッシュ・パブではデブリンと2人、ダーツの勝負や即興の5行韻詩のやりとりを楽しみながら 火花を散らす。
しかし捜査の猶予時間はもはやない。
武器密輸出の疑いの晴れぬまま出港する船に対し、動きのシーンの少ないこのシリーズには珍しく 食らいつく様にして湾岸沿いを疾走するプジョー・カブリオレ403を空撮で捕える。
走れ、プジョー!、急げ、コロンボ!!

司馬遼太郎氏曰く
「愛蘭土の民は客観的には全敗の民であるが主観的には不敗の民である」
宗教と人種と歴史が絡み合う島、アイルランド。それは幾多の小説、映画の舞台となっている。
コロンボ・シリーズも例外ではなくこの題材に挑む。


「ここまで、ここを過ぎず」
この言葉が犯人・デブリンの過去と現在と未来を象徴し、70年代コロンボの最後となるエンディング。
それらは全て機智に富んだ名場面の数々であり、通算45作品を数えて尚衰える事を知らぬ質の高さに 驚くばかりである。


Impression & Triviaby なぽべん

“クラシック”シリーズ最後のエピソード。「ここまで、ここを過ぎず」。
過ぎてもいいのだけれど、それなりのクォリティーを保って欲しいものだ、新シリーズ。

ラストシーン、港のそばのバーでコロンボはデブリンを前に謎解きを始める。そのコロンボの後ろ、 窓越しに、ベルファスト行きの武器を「積んだ」船がゆっくりと港を出てゆくのが見える。 自分が追い詰められつつも、安堵の表情で船を見送るデブリン。
映像的にも面白いシーンだが、一時の感情や自己保身のためにではなく、 政治的理由が絡んだ殺人というパターンは珍しい。

クライブ・レビルは『星の王子様』(1974 S・.ドーネン監督)で、コミカルに“ビジネスマン”を演じている。
車のディーラー・ジェンセンを演じたL・Q・ジョーンズは、数かずの戦争映画やウェスタンに出演、 この「策謀の結末」でも、ウェスタン調の帽子をかぶって登場している。日本語版(小池版)では、 大泉滉があの訛った口調で声を付けている。
1997年記