映画史に残る名作、新聞王チャールズ・フォスター・ケーンの生涯を描いた『市民ケーン』に
捧げられた作品、と言えるだろう。加害者の心理学者、エリック・メースン(ニコール・ウィリアムソン)が
シネマ狂という設定で数々の映画にまつわる品が見られる。
メースンは心理学者として今日も講習に忙しい。彼の「48時間人間改造コース」は常に人気の的。
“自分をコントロールする”をキー・ワードに悩み多き現代人をストレスから解放するのが目的だ。
講習の始めにはメースンが飼育する2匹の黒のドーベルマン、ローレルとハーディーも登場。
彼は受講者に2匹を紹介した後助手達に講習を任せ一旦退場。午後一番に定期検診を受けその後帰宅。
午後5時には再び講義に戻る予定になっている。
この日、メースンは助手のチャーリー・ハンター(ジョエル・ファビアーニ)をテニスに誘っていた。検診後、
講義を再開するまでの時間に邸内のテニス・コートでリフレッシュ、という感じで。
これは罠だ。復讐だ。何も知らないハンターは一足先に2匹の犬と共にメースン邸に向かっていた。
メースンの妻ロレンは生前、ハンターと愛人関係だった。ロレンは死んだ。今度はハンターの番だ。
メースンは医者が離れたときを見計らい自宅に電話を入れる。台所の電話に出るハンター。
なぜか駆け寄る2つの黒い影、ドーベルマン。メースンはハンターがある言葉を発するよう仕向ける。
ケーンの最後の言葉“薔薇のつぼみ”(rosebud)。ローレルとハーディーは狂暴な野獣と化した。
殺害方法がユニークだが、すぐにコロンボに見抜かれてしまう。
殺害方法の解明まで、もう少し引っ張っても良かったような気がするが…。
犯人エリック・メースン(N・ウィリアムソン)が熱狂的映画ファンだという設定は、殆ど内容に
関係ないものの、古い映画のポスター、
『市民ケーン』に登場したソリ(重要な小道具になっている)や
「K」の文字が入った門飾りは楽しめる。
特にソリは(あれが本物だとしたら)、カラーで拝めるチャンスは滅多にないだろう
(古ぼけて白黒で見た方がいいような代物ではあるが)。未確認情報だが、『市民ケーン』の撮影で
実際に使われたソリは、現在スピルバーグが所有しているとか。
曲がったキューの持ち主W・C・フィールズとは、サイレント映画時代のコメディアン。詳しい紹介がなされ
たサイトは
ここ。
2匹のドーベルマン“ローレル&ハーディ”の名前は、サイレント映画時代のコメディアンから。
“極楽コンビ”と言われた彼らだったが、実生活では中が悪かったとか。
犬の訓練士コクレーン役のトリシア・オニールは、「スター・トレック ネクスト・ジェネレーション」にも数回
ゲスト出演しているようだ。
劇中登場する映画ポスターは以下のようなもの。
(情報提供:mosnaskさん)
「市民ケーン」(41)監督・主演オーソン・ウエルズ
「逃亡者」(47)監督ジョン・フォード・主演ヘンリー・フォンダ
「熱血児」(49)監督アーサー・ピアスン・主演ダグラス・フェアバンクス・Jr
「ガン・ホー!」(43)(未公開)監督レイ・エンライト・主演ランドルフ・スコット
「容疑者」(44)監督ロバート・シオドマク・主演チャールズ・ロートン
「シンガポール」(47)(未公開)監督ジョン・ブラム・主演フレッド・マクマレイ
「チャップリンの冒険」(17)
「トゥー・チケット・トゥ・ロンドン」(43)(未公開)監督エドウィン・マリン
「情熱の悪鬼」(24)主演ルドルフ・バレンチノ
「キングコング」(33)監督メリアン・C・クーパー・主演フェイ・レイ
「荒鷲戦隊」(42)監督アーサー・ルービン・主演ロバート・スタック
「テキサスの旋風」(32)出演ジョン・ウェイン、ウォルター・ブレナン
「ボス・オブ・ハングタウン・メサ」(42)(未公開)監督ジョセフ・H・ルイス
「シルバー・バレット」(42)(未公開)監督ジョセフ・H・ルイス
「ファラオズ・ウーマン」(60)(未公開)主演リンダ・クリスタル(犯人のオフィス)
「劇中重要な意味を持つ「市民ケーン」の橇のとなりに「容疑者」のポスターがあるのが、
既にコロンボが犯人の匂いを嗅ぎ付けているのを暗示しているようで面白いです。
同様に「狂ったシナリオ」でも
「デスティニー(運命)」のポスターが飾られ、
ははぁフローリー監督同じ手を使ったな、と思わせ、面白かったです。
尚、犯人の自宅はセダ・バラ(サイレント時代の大女優・1955年死去)のものだったという
設定ですが、本物かどうかは不明。
又、日本のTV放映時にカットされた、コロンボが犯人に、被害者が攻撃命令を
うけた犬に襲われたとほのめかすシーンのテーブルは「市民ケーン」のパロディに見えます」
(mosnaskさん)
1997年記