ロンドンの傘/DAGGER OF THE MIND
米1972/11/26 日1973/7/29

監督 リチャード・クワイン
脚本ジャクソン・ギリス
ゲストスター リチャード・ベースハート
声:高橋昌也
オナー・ブラックマン
声:岸田今日子
犯人の職業俳優(夫婦)
被害者1. 出資者
/ロジャー・ハビシャム男爵
2. 執事/ターナー
殺害方法1. 投げつけた化粧品の瓶が
 頭部を直撃
2. 絞殺?(首吊り自殺に偽装)


Introductionby T.O.

上空から眺めるウェストミンスター寺院、ビッグ・ベン、テムズ川…。コロンボ警部が唯一、 アメリカ大陸を離れてヨーロッパはイギリス、ロンドンで活躍する一遍。

ロイヤル・コート・シアターでは、サー・ロジャー・ハヴィシャム製作によるシェイクスピア4大悲劇の1つ、 『マクベス』の初公演を明日に控えリハーサルは大詰めを迎えていた。
主演のニコラス(リチャード・ベースハート)、リリアン(オナー・ブラックマン)・フレイム夫妻が ついに掴んだこの大役。 演劇界の大物製作者、サー・ロジャー(ジョン・ウィリアムス)から、リリアンが色仕掛けで資金を釣りだし、 ようやく得たチャンスだ。

夜のロンドン、雨。
1人の老人がリリアンの楽屋に現れた。サー・ロジャーだ。リリアンは驚く。 公演前日には姿を見せない事で有名なのだ。彼女は精一杯の媚びを売って彼を迎える。 だがもう遅かった。この老人は自分が利用されたことを知ってしまっていたのだ。
ニコラスも加わりサー・ロジャーをとりなそうとするが、老人は2人を罵り、遂に公演中止を口走る。 3人はその場でもみ合いになり…老人のみが倒れた。
2人は彼の死体を衣装箱に入れ、リハーサルが終わるのを待ってサー・ロジャーの屋敷に運ぶ。 そして執事タナー( ウィルフレッド・ハイド=ホワイト)らに見つからぬように屋敷に忍び込むと偽装工作を行った。

翌日、ヒースロー空港ではヨレヨレのレインコート男を着た挙動不審の男が “カミさんの”スーツケースを探していた。コロンボ警部、ロンドン到着である。


Impression & Triviaby なぽべん

コロンボがロンドンへ海外出張する。カメラ片手に写真を撮りまくる姿は、ただの田舎者だ。

ダンカン王を殺し、妻に唆されて王位につくマクベス。
「女が生んだ者には殺されない」はずのマクベスだったが、「女から生まれる前に、 母の腹を割いて出てきた」(帝王切開のこと?)マクダフに討たれる。
「ロンドンの傘」で犯人夫婦の立つ舞台はシェークスピアの『マクベス』だが、 「ロンドンの傘」はその翻案でもあるようだ。
スポンサーを殺し、その資金をつぎ込んだ舞台でスターダムにのし上がるものの、 異国からの来訪者に犯罪を暴かれる。
原題も『マクベス』(第2幕3場)から取ったもの。

舞台がロンドンとはいえ、『刑事コロンボ』はアメリカ製。アガサ・クリスティーの舞台を
「あんな田舎芝居!」
と言わせているのも面白い。

一癖あるバトラーを演じたウィルフリッド・ハイド=ホワイトは 『マイ・フェア・レディ』(1964 ジョージ・キューカー監督)でピカリング大佐役を。

コロンボの声をあてている小池朝雄は、この時舞台で喉を痛めたとかで、しわがれ声。
ところがコロンボ自身も、ラスト近く、「どうも喉の調子が悪くて…」と言っているのが奇妙な偶然だ
1997年記