死者の身代金/RANSOM FOR A DEAD MAN
米1971/3/1 日1973/4/22
by T.O.
敏腕の若手女性弁護士レスリー(リー・グラント)は、法曹界の実力者で年の離れた夫の殺害を計画、
実行する。
目的は彼の財産と自らの社会的野心のためだ。すでに二人の仲は冷え切っており
彼女には何のためらいも無い。
作戦はアリバイ工策と捜査の混乱を図るべく誘拐殺人事件への偽装を行うというもの。
深夜、自宅において銃で夫を射殺。夫の車で死体を海に捨て、車を人目のつかない所に乗り捨てる。
翌日、オフィスで友人からの電話を犯人からの脅迫電話のようにみせ警察に連絡。
夜、今度は自宅において捜査陣がそろった時間を見計らいオフィスからオートダイヤルで夫の声を再生、
身代金要求の芝居をする。身代金の引き渡しは、自家用飛行機から指定場所(地上からの
フラッシュ・ライト)に金を落とすという自家用飛行機の操縦に自信のあるレスリーならではの方法。
飛行機に乗り込む直前、身代金入りのバッグをすり替える。身代金投下地点に捜査陣が到着した時、
発見できる物は空のバッグだけ。事件は誘拐殺人として迷宮入りになるはず…。
しかし、帰宅したヨーロッパ留学中の義理の娘はレスリーを疑いはじめる。
コロンボ警部登場第2弾。
シリーズ化への布石となる作品だけにコロンボのキャラクターをはっきりと決定付ける台詞が
2ヶ所登場する。
1ヶ所目は死体が発見され事件が殺人に進展した際、FBI捜査官に対するコロンボの台詞。
2ヶ所目は物語後半、レスリーがコロンボに向かって彼女自身のコロンボ観を披露する台詞。
by なぽべん
『殺人処方箋』から3年、後のシリーズ化を意図して制作されたパイロット版。
身なりや身内の話で犯人を油断させ、不意打ちを喰らわせるというコロンボのキャラクターを
犯人にを説明させるシーンが入っているのは単発モノだった前作同様だが、
今回は上のイントロダクションにもあるように、シリーズ化への布石という意味合いが
含まれている。
後半、コロンボが「担当がえになった」と“お別れ”を言いにやって来る設定も前作と同じで、
結末はレスリーにとって、まさに不意打ちになるよう描かれている。
それは終盤、レスリーが金を遣わざるを得ない状況に追い込まれたように、
「レスリーvsコロンボ」から「レスリーvsマーガレット」に視点を移さざるを得なくなった
視聴者にとっても、小気味良い不意打ちだ。
犯人を追い込み、自らに証拠(ボロ)を出させるのはシリーズの常套手段だが、「死者の身代金」ほど、
コロンボの人物に対する洞察力を表した作品はないだろう。
レスリーを、「人の感情も金で動くと思っている人物」だと判断したのはもちろんだが、
マーガレットを、「憎しみを糧として気丈に振る舞える人物」として、レスリーを追い込むのに
(悪く言えば)利用したことにも、それが表れている。
綱渡り的にボロを出させた『殺人処方箋』よりも裏付けの強い結末であり、同時にコロンボの
キャラクターを決定づける一作と言える。
中盤過ぎ、コロンボがビリヤードをするシーンがある。なかなかの腕で3つをポケットに沈めるが、
手玉まで…。
同じシーン、砕いたクラッカーをチリに入れて食べているが、これがうまそう!
ファストフードのウェンディーズでも、チリを頼むとクラッカーが付いてくる。
若いFBI捜査官の赤・紺・黄色というド派手なネクタイ!
ラストシーンでコロンボが注文するのは、吹き替えでは「グレープフルーツジュース」だが、
原語では a root beer と言っている。ルートビアはサルサ根などの汁から作るコーラに似た飲料。
シリーズのパイロット版故にオープニングには"COLUMBO"というタイトルは入らず、"PETER
FALK in RANSOM FOR A DEAD MAN"で始まる。また以降のシリーズと違い、エンドクレジットも
ロールアップ・タイプ。(「パイルD-3の壁」もロールアップ)
1997年記/2001年改